2018/7/9
当社では毎月、各部署においてスキルアップを目的としたミーティングを開いています。そのテーマは、クライアントごとの制作事例の検討や業務に関連する法改正のチェック、校正の精度を高めるノウハウの紹介、企画立案のためのアイデアの出し方など、多岐にわたります。
そしてこのたび、制作部内の1つの課において、編集の基本ともいえる「原稿整理」をテーマに語り合うミーティングを行いました。その概要を、こちらの「&VOICE」のコーナーでご紹介します。
【A課長】
「原稿整理」というと、一般的には「単に文章の体裁を整えること」という意味で使われると思うんです。「原稿整理」をネットで検索すると、「原稿の内容チェックと、文字原稿の字体、句読点、段落、仮名遣い、用語の統一などを行うこと」(一般社団法人 日本印刷産業連合会HPより)などと説明されています。
でも、このミーティングではもっと広くとらえて、原稿の内容からタイトルを考えるとか、タイトルに合わせたビジュアルを考えるとか、そういうことまで含めて話したいと思います。
で、その前提として2つほどお話しします。
まず、私たちの部署の仕事は、クライアント(主に健康保険組合や企業年金基金)の広報誌制作ですから、クライアントが伝えたいと思っていることをしっかり把握し、それが読者にきちんと伝わるようにすることが重要です。
それと、クライアントは、健康保険や年金のプロフェッショナルではありますが、必ずしも出版・編集のプロではありません。ですから私たちが、必要に応じて提案をしたりアドバイスをしたりして、よりわかりやすい誌面に作り上げることが大変重要です。「原稿整理」という業務1つに関しても、こういった認識といいますか、心構えをもったうえで進めていく必要があります。
【社員B】
確かに、私たちの部署では、作家やライターから原稿をもらうことはむしろまれで、原稿や原稿の元になる資料をクライアントからいただきますよね。クライアントは文章のプロではないので、原稿の手直しが必要なケースは結構あります。
クライアントからも、「この文章、自分でもわかりづらいと思うので整理してください」とか、「このタイトル、しっくりこないので、適当に変更してください」などとお願いされることは多いです。そこは私たちの腕の見せ所であり、当社の強みでもあるので、もちろん喜んで引き受けますけれど。
ただ、原稿や資料をじっくり読み込んでも、クライアントが伝えたいことが自分でも今ひとつわからないというケースもあって、そういうときはクライアントに連絡をして、直接話を伺うようにしています。まず私たち編集者が記事の内容を100%理解できなければ、読者にわかりやすく伝えることなんてできませんからね。そういう、伝える側の意図を深く掘り下げるということも、原稿整理の前段階の作業として必要ですよね。
【社員C】
私は、「原稿整理」というのは、まずクライアントやライターが書いた元となる原稿があって、それをどう見せていくかという作業だと捉えています。
「原稿作成」の場合は、自分で文章の内容や文字量もコントロールできるので、見せ方の自由度も高いですが、「原稿整理」の場合、ボリュームの調整などはなかなかしづらいですよね。
ですから、原稿整理の作業手順としては、大きく分けて2つの段階があると考えています。1つ目が「文章そのものを整理すること」。2つ目が「レイアウトを考えて原稿を整理すること」。箇条書きすると、こんな感じです。
【社員C】
要するに、まずは文章そのものを整理して、それからレイアウトを考えつつ、ここは本文とは別扱いのコラムにしようとか、ここは文字を減らそうとか、見た目の仕上がりも意識したうえで、再び文章を整理する――というようなイメージです。
【社員D】
Cさんの書いた(1)と(2)がきっちりできれば、原稿整理としては完璧ですね。原稿整理の作業工程をこうして見直してみると、なかなか興味深いですね。
文章にしても写真やイラストにしても、オリジナルの完成度が高いのが一番ですけれど、もちろんそうでない場合も多いので、荒削りなもの(原稿)を世間様に出して恥ずかしくないものに育て上げるという意味で、ちょっと“子育て”に近いものがあるかもしれませんね(笑)。
【社員C】
子育てですか!(笑)。でも、そうですね。人間に身だしなみが必要なように、記事づくりにおいても、タイトルとか見出しとか、体裁を整えることは大事ですよね。読者が最初に目にするのって、そこですものね。
【A課長】
話がいろいろと広がって面白いですけど、文章そのものについても少し話しましょうか。文章を書くときに気を付けていることってありますか。
【社員B】
私は、次の6つのポイントを意識しています。
【社員C】
5.と6.が気になったんですけど、説明してもらえますか?
【社員B】
5.の「書きすぎないこと」は、まあ、エッセイのような読み物ふうの文章を書くときに心がけていることで、1から10まで全部書いてしまうのではなくて、読者に考えてもらう余韻を残すという意味です。学者が書く論文とかビジネスマンの報告書には理詰めも結論も必要でしょうけれど、私たちの作っているものって必ずしもそうじゃないですから。
6.の「だれか一人のために書く」というのは、例えば自分の親とか特定の友人なんかに伝えるとして、こんな内容で通じるかな?って考えるんです。そうすると、これじゃ絶対伝わらないなとか、読んでもらえないなとか思えることがあります。で、よりわかりやすく噛み砕いたりやさしい言葉を使ったりして、書き直すんです。
【A課長】
記事として見せるときの「原稿整理」の話をしましょうか。読者の目を引くタイトルや見出しを付けることは、とても大事ですよね。
私はタイトルを付ける際、語感(語呂)に配慮しています。日本人の意識に入ってきやすいリズムで考えると、割としっくりくることが多いと思うんですよ。例えばこんな感じです。
【社員D】
確かに、韻を踏んだ言葉って自分でもたまに使いますね。あとダジャレとか四字熟語とか諺(ことわざ)とか、基本的に日本人は好きですよね。私は、本文を読んで、なかなかいいタイトルが付けられないときは、おもしろいタイトルを先に考えてしまって、それに合うように本文を少し書き換えてしまうということもあります。
【A課長】
さて、今回は、4人で「原稿整理」について話し合いました。原稿整理って何?という根本的な話から、文章作成や見出しの付け方など面白かったですね。編集者一人ひとりにこだわりがあると思うので、他のスタッフとも、機会があればこういう話をしてみたいですね。今日はありがとうございました。