2018/8/21
――当社の看板雑誌でもある『すこやかファミリー』。ご存知ない方のためにまずは簡単にこの雑誌を紹介してください。
各企業・団体の健康保険組合の加入者向けの健康情報誌です。主な読者は、家族の健康を守る主婦の方で、季節の病気やその対策、メタボ健診のすすめ、ヘルシーなメニューの紹介、手軽にできるエクササイズ、子どもに多い病気などを掲載しています。
――『すこやかファミリー』の巻頭は、長年「未来に輝け!スーパーチャイルド」を連載しています。未来に輝きそうなスーパーチャイルドは、どうやって見つけてくるのですか?
取材対象者に限ったことではないですが、探そうと思って調べると、見つからないんですよね。だから、常日頃からアンテナを張って、新聞やテレビ、インターネット、雑誌など、いろいろな情報をチェックしています。
――過去には、現在大活躍中の有名な選手が登場した回もありましたね。
この巻頭インタビューのシリーズは、前身の「スーパーチャイルドの育て方」で、2013年4月に開始しました。記念すべき第1回は、当時中学2年生だった清宮幸太郎選手(現・北海道日本ハムファイターズ)とそのご両親にインタビューしたんです。その後、フィギュアスケートの本田真凛選手、卓球の張本智和選手や平野美宇選手にも、彼らが小・中学生のときに取材させていただいたんですよ。
――日本のスポーツ界の将来を担う選手ばかりですね。
ありがたいことに、「『すこやかファミリー』に載った子は将来活躍するね」なんてことをいわれることもあります(笑)。体操の宮川紗江選手は、2014年に取材させていただきましたが、それから2年後リオ五輪に出場し、体操女子団体総合で4位入賞されました。『すこやかファミリー』で取材させてもらった子たちが東京五輪で活躍するのを観るのが、今から楽しみなんです。
――起用の際のポイントは?
スポーツだけではなく、チェロの北村陽さん、きのこ研究家の和田匠平さんや、最近ではウクレレの近藤利樹さんなど、さまざまな分野で活躍している子どもたちにインタビューしています。起用の際は、スポーツにせよ、研究や音楽の世界にせよ、成績や結果だけでは選ばないようにしています。なぜこの分野に興味をもったのか、なぜ熱心に向き合えるのか、そういったことを聞いてみたいと思わせてくれる「何か」をもっていそうか、できる限り調べてからオファーしています。
――Sさんが編集の仕事に就かれた理由、当社に入社された経緯などもお聞かせください。
以前は、広告制作会社で企業のPR誌などを制作していました。転機となったのが、自動車業界の広報誌を担当したこと。高齢者の安全運転の啓発が目的の雑誌で、当時注目を集めていた脳トレの記事などを掲載しました。その時に脳科学の第一人者の先生と仕事をさせてもらったりして、医療・健康分野の広報に興味が湧いてきたんです。そんなとき、ちょうど社員を募集していたのが当社でした。
――Sさんは『すこやかファミリー』を担当されてから何年ですか? 始めた当初の思い出は?
入社以来携わっているので、もう11年になりますね。実は、父が『すこやかファミリー』を購読している健保組合の被保険者だったので、小さいころからわが家には毎月『ファミリー』が送られてきていたんですよ。そこで、面白そうな記事があると読んでみたり、料理の記事を見ておいしそうだなと思った記憶があります(笑)。『すこやかファミリー』の編集担当に決まったときは、小さいころから知っている雑誌の作り手になることに不思議な感慨がありました。両親に「すこやかファミリーを作ることになったよ」と報告に行きましたね。
――その時のご両親の反応は?
母はとくに喜んで、周囲の人に宣伝もしてくれたみたいで(笑)。母の知り合いが数人、『すこやかファミリー』の定期購読を始めてくれたそうです。これで、ちょっとは親孝行できたかな、とうれしくなりました。
――最初に担当した記事は覚えていますか?
2009年4月号の婦人科系の最新医療についての記事でした。取材自体は前職でも経験していたので、緊張はしなかったんですが、原稿を作成して上司に見せたら、赤字だらけで戻されました。雑誌の特性も理解していなかったし、医療に関する知識もなかったから当たり前ですよね。もちろん取材前にできるだけ勉強はしていったのですが、全然足りないことを実感しました。これは僕の意見なんですが、その雑誌にどういうものを求められているのか、本当の意味で理解するには結構時間がかかるものだと思います。編集会議でも、一言も発せないことが多々ありました。企画を出しても空振りつづき。ようやくわかってきたのは、担当になってから6年くらい経ってから。ほんの4、5年前ですね(笑)
――担当された記事の中でも、とくに印象的だった記事を教えてください。
2013年10月号の特集「大人の予防接種」は、自分でも興味があって企画したので、とくに思い入れがありますね。ちょうどそのころ、風しんが若い人を中心に流行したこともあって、情報の少なかった「大人のワクチン接種」を取り上げたいと思いました。この特集では、ワクチンの感染予防のメカニズムから、大人にも接種が必要な理由、主要なワクチンの種類まで、わかりやすく解説しました。読者の方からも「初めてワクチンのことを理解できた」などの声があり、評判がよかったですね。取材させていただいた先生方にも、「わかりやすいね」と喜んでもらえて、編集者冥利に尽きましたね。
――最近の記事で反響があったものは?
2017年7月号の「太りにくい食べ方レッスン」という特集は反響がありました。ダイエットと一言でいっても、世の中にはありとあらゆる方法がありますよね。その中でも近年話題になっているロカボ、スローカロリー、時間栄養学などに焦点を当てました。こういったダイエットの記事はいろんなところで取り上げられていますが、単なるダイエット方法の紹介にとどまらず、その分野のトップの専門家に取材をし、医学的根拠に基づいた情報を掲載しました。うちだからこそ出せる、「正しい情報」で、胸を張れる内容になっています。
――取材や監修依頼などで、医師、薬剤師、管理栄養士などたくさんの専門家と仕事をされています。専門家と仕事をするうえで心がけていることは?
医療を始めとした最先端の専門家に、せっかく話を聞けるのだから、少しでも多くの情報を引き出したいと思います。少しでも時間を無駄にしないように、取材の準備にはじっくりと時間をかけ、打ち合わせや下調べをしています。また、取材の際は、先生が話しやすいように、スムーズなインタビューを心がけています。「雑談からそれとなく取材内容の話に入って、質問項目はすべて聞いてくる」が、理想ですね。
――改めて健康情報誌という分野での編集の面白さや難しさは?
「健康」「医療」という人の命がかかわったテーマを扱っている以上、医学的根拠に基づいた正しい情報の提供が非常に重要なことはいうまでもありません。医療情報は、用語にしても、メカニズムにしても、基本的に難しいものが多い。正確だからといって、医師が話していることをそのまま文章にしても、一般の人には理解しにくいことも少なくありません。編集者が専門家と読者の間に入ることの意味って、そこにあると思うんです。「この病気ってこういうことだったんだ! この記事を読んでようやくわかった」なんていってもらえるような記事を作っていきたいです。
――最後に、改めて「『ファミリー』のPRを30秒でしてください」といわれたら、どんなコメントをしますか?
一般的な雑誌とは違い、『すこやかファミリー』には広告が入っていません。表紙から中面、裏表紙まですべてのページが、編集部で作成した「記事」なんです。編集部員一人ひとりが専門家へ取材を重ね、ていねいに作り込んでいます。健康についての正しい情報が幅広く、わかりやすく、バランスよく織り込まれた健康情報誌になっていると思います。機会がありましたら、ぜひ手に取ってページをめくってみてください。
――ありがとうございました。Sさんたち編集者が情熱を込めて作っている『すこやかファミリー』ぜひご覧ください。