COPD(慢性閉塞性肺疾患:chronic obstructive pulmonary disease)とは、歩行時や階段を上がるときなど、体を動かしたときに息切れ、咳、痰などの症状が現れる病気です。わが国には約530万人の患者がいるといわれていますが、その大多数が未診断、未治療と考えられるため、潜在的な患者数はもっと多いものとみられます。
COPDの主な原因は喫煙です。タバコを吸い続けていると肺の中にある細い気管支に炎症が起こり(細気管支炎)、さらに気管支の先にある肺胞(酸素と二酸化炭素のガス交換を行う)が破壊されていきます(肺気腫)。気管支の炎症や肺気腫などによって、酸素の取り込みや二酸化炭素を排出する機能が低下していく病気がCOPDです。
COPDになると、息を強く吐いたりすることなどができなくなっていき、運動をしたときも十分な酸素を肺に取り込めずに息切れがしたり、慢性的に咳や痰が出たりするようになります。そのまま治療せずに放置すると、徐々に日常生活をおくることが困難になっていきます。肺胞は一度破壊されてしまうと治療をしても元に戻ることはありません。
また、インフルエンザ、肺炎などの感染症を発症しやすくなります。これらの感染症によってCOPDの症状が悪化する「増悪」(ぞうあく、もともとあった症状がさらに悪くなる)を起こしやすく、病状が進行した人では命にかかわることもあります。息切れの回数が増えるなど、COPDと思われるような症状がみられたら、早めに呼吸器内科などを受診しましょう。
COPDの診断には、通常、スパイロメーターという装置を使用します。スパイロメーターに息を吹き込んで、最初の1秒間に吐き出す息の量である「1秒量」、思い切り吐き切った息の総量である「肺活量」が測定され、「1秒率」(1秒量を肺活量で割った値)が算出されます。「1秒率」が70%未満でその他の疾患の疑いがなければCOPDと診断されます。ぜんそくや肺結核など、他の病気でも「1秒率」が低下することがあるため、あわせて胸部X線検査などの画像検査を受けます。
喫煙を続けると呼吸機能がさらに低下していくため、治療ではまず禁煙することがなにより重要です。タバコをやめると確実に機能低下のスピードを緩められ、症状も楽になります。
また、身体活動を活発に行うことがCOPDの進行を防ぐのに効果的との研究結果が出ているので、家事や趣味など日常生活で積極的に体を動かすことも大切です。手軽な身体活動としておすすめなのがウオーキングです。歩くことによって全身の筋力を維持し、体力低下を防ぐことができます。
医師や理学療法士の指導のもと、呼吸リハビリテーションも行われます。これは、楽に呼吸するためのストレッチをしたり、呼吸にかかわる筋肉を鍛えたりするものです。よく行われるのが口すぼめ呼吸で、鼻から息を吸い、唇を軽く閉じるようにして口からゆっくり長く息を吐く呼吸法です。
薬物療法としては気管支拡張作用のある抗コリン薬(吸入薬)、β2刺激薬(吸入薬、内服薬、貼付薬)、テオフィリン薬(内服薬)などが用いられます。インフルエンザや肺炎にかかると増悪を起こす危険性が高まるので、予防のためにインフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種がすすめられます。