このたびの令和6年能登半島地震により被害に遭われたみなさまに、心よりお見舞い申し上げます。みなさまの安全と、被災地の一日も早い復興をお祈り申し上げます。
令和6年能登半島地震では、避難所生活において断水で水洗トイレの使用ができないなど衛生環境の問題や、免疫力が低下し感染症が拡大するなど、被災者の健康被害が深刻です。
避難所生活で起こりえる災害関連死やその対策を知っておくことが、災害発生後に日常を取り戻すまでの助けになるかもしれません。
「災害関連死」とは、災害による負傷の悪化や、避難所生活による過度の疲労やストレス、持病の悪化などが原因で亡くなることです。地震による建物の倒壊や津波などの災害が直接の死因となる「直接死」と異なります。
かつて災害関連死として認定された例に、肺炎や心筋梗塞、持病のがんの悪化、精神疾患の悪化による自殺などがあります。
これらは、災害発生後の断水等の不自由な状態や、避難所生活による肉体的な負担の増加、地震による精神的なショックや余震への恐怖、災害の影響による治療環境の悪化などが原因と考えられています。
今回の能登半島地震による石川県内での死者数は232人、うち災害関連死の疑いは14人です(2024年1月18日時点)。
過去に発生した地震では、2016年に発生した熊本地震の死者計273人のうち、災害関連死の死者は約8割を占め、218人です。
また、2011年に発生した東日本大震災の死者計15,859人のうち、災害関連死の死者は3,794人にのぼります。
(警察庁発表、復興庁調査、NHK報道などをもとに作成)
災害時に避難し一時的な安全を確保できても、その後の避難所生活で体調を崩し、死に至る場合があります。熊本地震、東日本大震災の災害関連死の死因は、肺炎や気管支炎などの呼吸器系の疾患と、心不全やくも膜下出血などの循環器系の疾患によるものが約6割を占めます。
避難所生活では誰しも肉体的・精神的な負担がかかりますが、なかでも子ども、高齢者、障害者、日本語以外を母国語とする人は「災害時要支援者」といわれ、避難所生活において配慮が必要とされます。
災害関連死の死因に多い、呼吸器系の疾患と、循環器系の疾患への対策をご紹介します。
●感染症はかからない・広げない
手洗い・うがいなどは、普段の生活でも大切ですが、避難所生活ではいっそう重要です。かぜやノロウイルスなどに感染すると、普段と同じレベルの医療サービスを受けられず、重大な疾患につながる可能性が高まるからです。また、避難所の集団生活で感染症が急激に広がる危険もあります。特に子どもや高齢者、持病のある方などは症状が悪化しやすいため、できる限り行うようにしましょう。
●エコノミークラス症候群にご注意
避難所生活や車中泊では、エコノミークラス症候群(肺血栓塞栓症)になる危険性が高まります。長時間同じ姿勢でいると血の流れが悪くなり、足の静脈に血栓ができ、その血栓が肺の血管に詰まることで、最悪の場合死に至ることもあります。足に血栓ができても自覚症状がないことが多いため、予防が大切です。
断水や排水管の損傷などにより、避難所で水洗トイレが使用できない場合があります。仮設トイレが避難所に届くまで時間がかかる場合もあり、流せないトイレに排泄物が溜まってしまい、使用できる衛生状態でなくなることもあります。
トイレが不安で水分補給や食事をしなくなると体調不良につながるため、国土交通省では、水洗トイレに近い環境でトイレができる「マンホールトイレ」の設置を推進しています。
すでに東日本大震災や熊本地震でも設置の実績がありますが、マンホールトイレの設置数は全国で約42,000基にとどまっています(令和3年度末時点)。災害に備えてさらなる普及が求められています。
地震以外にも、急な大雪の際に車中泊を余儀なくされるなど、生活の中で、いつ、どこで被災者になるかわかりません。災害に備えて、防災グッズや避難経路の確認とともに、家族で避難所生活において気をつけることを一緒に確認してみてはいかがでしょうか。
*参考:厚生労働省ガイドラインなど