年齢を重ねると、トイレの回数がふえて困っているという人は多いのではないでしょうか。頻繁にトイレに行くようになると行動が制限され、日常生活にも支障が出てしまいます。トイレでお悩みの方は、生活スタイルを見直し、少しの運動をとり入れることで改善が見込まれますので試してみませんか。
年をとるとトイレが近くなる、これにはいくつか理由があげられます。まず膀胱の伸縮性が低下することがそのひとつです。膀胱が硬くなってためられる尿の量が減るために、トイレに行く回数がふえてしまいます。(*1)
次に尿を濃縮するホルモンが減ることです。尿は、血液中の老廃物と余分な水分が腎臓でろ過されてつくられます。その際必要な水分はホルモンの働きにより再吸収され、尿が濃縮されますが、加齢によりこのホルモンが減少し、尿量がふえて排尿回数もふえることになります。
女性に多いのが、骨盤底筋の緩みです。骨盤底筋は骨盤内で膀胱などをハンモックのように支えている筋肉で、女性は妊娠・出産の影響で緩みやすく、尿漏れや頻尿の原因となります。また、男性では膀胱の下で尿道を取り囲んでいる前立腺が肥大して尿道を圧迫し、排尿困難、残尿感、頻尿の原因となります。
このほか膀胱が過敏になり、少しの尿がたまっただけでトイレに行きたくなる過活動膀胱も、頻尿を招く一因となります。
頻尿対策としては、まずコーヒーやお茶などに多く含まれるカフェインをとり過ぎないようにすることです。カフェインには利尿作用(尿をつくる作用)があるからです。特に夜間寝ているとき、トイレで起きてしまうことが多い人は、夕方以降はこれらを飲みすぎないようにしましょう。
また観劇や屋外イベントなど、尿意がおきたときすぐに用を足せないようなシチュエーションでは、不安感からトイレに行きたくなりがちです。必ず事前にトイレをすませておく、複数のトイレの場所を把握しておく、などの“備え”をしておくと結果的にトイレにあまり行かないですみます。
「こまめにトイレに行くこと」がよいと思いがちですが、これには逆効果の場合もあります。こまめにトイレに行くと、ちょっとおしっこがたまっただけでトイレに行くというクセがついてしまうからです。逆に尿意が生じてもなるべくガマンする、という方法(膀胱訓練)が、過活動膀胱など多くの頻尿に有効です。トイレに行きたくなったら、最初は5分行くのをガマンします。それができるようになったら徐々にガマンする時間を延ばし、排尿間隔が2~3時間になることを目標に続けます。(*2)
笑ったとき、くしゃみをしたときなどに尿漏れし、これが気になってトイレの回数がふえている…、という人は、骨盤底筋の緩みが原因で起こる腹圧性尿失禁の可能性があります。そんな人には骨盤底筋のトレーニングが有効です。(*3)
トレーニング方法は、まずは仰向けになって膝を軽く曲げ、息を吐きながら睾丸や腟・肛門に力を入れるのを5秒、そして力を抜いて息を吸うのを5秒行います。体の外側と内側の両方に力を入れることを意識してください。このトレーニングはほかのタイプの頻尿にも有効です。立っているとき、寝ているとき、椅子に座っているときなど、いろいろな姿勢、場面でできるのでぜひ生活に取り入れ、続けてみてください。
骨盤底筋のトレーニング(朝・晩布団の中で)
*1 日本老年医学会:老年医学系統テキスト 西村書店
*2 岡村菊夫ら:高齢者失禁ガイドライン
*3 福井圀彦・前田眞治:老人のリハビリテーション 第8版 医学書院
(参考資料:医師・医学博士 平松類著「老人の取扱説明書」SB新書)
(参考文献: 医者・医学博士 平松類著「老人の取扱説明書」SB新書刊)