頻尿は、年をとるにつれて悩む人が増える身近な排尿トラブルです。仕事に集中できなくなったり、夜間の頻尿のために睡眠障害を招いたりと、生活の質(QOL)を大きく低下させてしまうこともあります。何らかの病気が原因で起こる頻尿ではなく、加齢などを原因とする軽度の頻尿であれば、生活習慣を工夫することで改善が期待できます。
頻尿は、代表的な「蓄尿症状」のひとつ。蓄尿症状とは、尿をためることに問題があって起こる症状のことで、頻尿のほか、尿意切迫感、尿失禁などがあります。一般に、起きてから就寝するまでの排尿回数が8回以上の場合に頻尿であるとされています。
頻尿の大きな原因は、加齢です。これは加齢とともに膀胱の容量が小さくなるためです。
女性の場合、骨盤底筋のゆるみも頻尿の大きな原因となります。骨盤底筋とは骨盤の底にあり、膀胱や尿道を支えている筋肉で、この筋肉がゆるむことによって頻尿や尿漏れが起こりやすくなります。
下記の病気なども頻尿を招く原因としてあげられます。
●過活動膀胱……尿がたまっていないのに膀胱が収縮し、頻尿や我慢できない尿意(尿意切迫感)が起こります。脳卒中、パーキンソン病、前立腺肥大症、骨盤底筋のゆるみなどが原因となる場合もありますが、加齢によっても起こりやすくなります。
●前立腺肥大症……男性の膀胱の下にある前立腺が大きくなって尿道を圧迫するもので、頻尿は前立腺肥大症の代表的な症状のひとつです。ほかに、尿が出にくい、尿の勢いが低下するなどの症状(排尿症状)もみられます。
●膀胱炎……代表的なのは急性膀胱炎で、膀胱に細菌が入って膀胱粘膜が炎症を起こすものです。頻尿のほか、排尿時痛、尿が白く濁る、血液が混じる、などの症状がみられます。急性膀胱炎は、男性よりも尿道の短い女性に多くみられます。
●心因性頻尿……膀胱や尿道に病気があるわけではなく、心理的な不安や緊張のために、日中に何度もトイレに行きたくなるものです。通常、夜間の頻尿はみられません。
このほか、女性によくみられる子宮筋腫(子宮にできる良性の腫瘍)でも、腫瘤が膀胱を圧迫する場所にできると、頻尿が現れることがあります。
夜間、排尿のために1回以上起きると夜間頻尿とされます。ただし、通常は排尿のために2回以上起きる場合に治療などの対策が検討されます。夜間、たびたびトイレに起きると睡眠が妨げられるだけでなく、高齢者では転倒のリスクも高まります。
夜間頻尿の原因としては、前述の過活動膀胱や前立腺肥大症などのほか、抗利尿ホルモンの減少もあげられます。通常寝ている間は抗利尿ホルモンの働きで尿の量が減少しますが、加齢によって抗利尿ホルモンの分泌量が減少し、寝ている間も尿が多くつくられ、排尿のために起きる回数が増えてしまいます。
また、寝つきが悪い、眠りが浅い、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害も、夜間頻尿の原因になることがあります。
前立腺肥大症などの病気が原因で頻尿が起きている場合は適切な治療が必要ですが、加齢や過活動膀胱、骨盤底筋のゆるみなどが原因の場合は、生活習慣を工夫することで症状の改善が期待できます。
水分のとりすぎは頻尿の一因です。自分ではそんなにとっていないと思っていても、実際にはかなり摂取している場合があります。以下のポイントを参考に、水分のとり方を見直してみましょう。これは夜間頻尿の対策にもなります。
●食事以外の飲み物からの水分摂取量は1日1000~1500mLが目安
●就寝の2時間前からは水分の摂取を控える
●カフェイン、アルコールの摂取を控える
カフェインとアルコールに含まれるカリウムには利尿作用があるため尿量を増やす。アルコールには膀胱を刺激する作用もある。
●塩分のとりすぎに注意する
塩分摂取量が多いと体の塩分濃度を一定にするために水分を多くとるようになり、尿量が増える。1日の食塩摂取量は男性7.5g未満、女性6.5g未満に。
骨盤底筋のゆるみが原因で起こる女性の頻尿や尿漏れに有効なのが骨盤底筋体操です。過活動膀胱にも有効なので、過活動膀胱による頻尿に悩んでいる男性にもおすすめです。
➀あお向けに寝て、全身の力を抜く
➁男性は肛門を、女性は肛門、腟、尿道を、へそのほうに引き上げるような意識で、ギュッとすぼめるように締める。5~10秒の休憩をはさみながら、これを繰り返す
・膝を軽く立てる
・尻を浮かせない
・へそのほうに引き上げる意識でギュッとすぼめる
※テーブルに両手を置き立った姿勢で、椅子に座った姿勢でなど、いろいろな姿勢で行うことができます。
〈20回を1セット。1日に3~4セットを目標に行う〉
尿意が起こったとき、すぐにトイレに行かずに我慢する訓練です。最初は5分、あるいは10分くらい我慢することから始め、慣れてきたら30分、60分と我慢する時間を延ばしていき、排尿の間隔が2~3時間くらいになることを目標にこれをつづけます。
頻尿に有効な市販薬もいろいろあります。膀胱の過敏性を緩めるフラボキサートを配合したもの(女性用)、尿意切迫感に伴う頻尿に有効なプロピベリンを配合したもの、そのほか生薬を主成分とする市販薬も複数あります。なお、急性膀胱炎は医療機関で抗菌薬を処方してもらうことが必要です。
頻尿のために日常生活に支障が生じている場合は、泌尿器科を受診しましょう。医療機関では、問診と検査(尿検査、血液検査、腹部超音波検査をはじめ、疑われる病気に合わせてその他の検査を追加)を行い、頻尿の原因を診断し、その原因に応じた治療が行われます。