「突発性難聴」はある日突然、左右一方の耳の聴こえが悪くなる感音難聴(内耳に原因があって生じる)で、まれに両耳が聴こえなくなることもあります。若い世代から高齢者まで発症がみられますが、とくに30~60代の働き盛り世代に多い病気です。
まったく聴こえなくなることもあれば、高音だけが聴こえなくなる場合もあります。はっきりした原因は不明ですが、内耳の蝸牛(かぎゅう)という部分にある、音を感じ取るのに必要な有毛細胞が血流障害をおこしたり、有毛細胞がウイルスに感染し、炎症をおこしたりすることが原因ではないかと考えられています。
同じような症状が現れる病気にメニエール病、聴神経腫瘍、外リンパ瘻などがありますが、「突発性難聴」は再発しない点がこれらとは異なります。 早期発見・早期治療がとても重要な病気で、発症から1ヵ月を過ぎて治療を始めても回復の見込みがほとんどないといわれていますので、疑われる症状がみられたら、すみやかに耳鼻咽喉科などの専門医を受診しましょう。
「突発性難聴」の治療は薬物療法を中心に行い、炎症を抑える効果のあるステロイド薬が使われます。軽症の人にはのみ薬、重症の人には点滴でステロイドを投与します。そのほか、血流を改善するための血管拡張薬、抗凝固薬、代謝改善薬や有毛細胞を守るためのビタミン剤が使われることもあります。
ストレスや過労、睡眠不足などがあるとおこりやすいといわれていますが、残念ながら「突発性難聴」には確実な予防法はありません。内耳の血液循環が悪くならないように、バランスのよい食事や十分な睡眠を心がける、耳に大きな刺激を与えない、過労やストレスに注意するなど、健康状態を良好に保つ生活が大切になります。