厚生労働省の「労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況」(平成29年)によると、現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスを感じている人の割合は58.3%にものぼるとか。今や誰もが使っている「ストレス」という言葉ですが、その意味を正しく理解している人は多くないかもしれません。今回はそんなストレスが体に与える影響や、対処法をご紹介します。
ストレスとは外部から刺激を受けたときに生じる緊張状態のこと。マイナスのイメージがあるストレスですが、多少のストレスはやる気を引き出したり、適度な休養をとるきっかけになったりと、良い面もあります。しかし、それが蓄積することによって心身にさまざまな不調をもたらすのです。“外部からの刺激”には、睡眠不足などの身体的要因、不安や心配事などの心理的要因、仕事や人間関係などの社会的な要因があります。また、結婚や入学など、一般的におめでたいとされる出来事がストレスの原因となることも。
ストレスの主な原因
身近な人の死、災害、失業、借金、離婚、結婚、出産、就職、転職、入学、金銭のやりくり、満員電車、仕事でのミス、騒音、人間関係、過労、睡眠不足、育児、介護、仕事上のノルマ、受験など
こうしたストレスにさらされると、副腎皮質からコルチゾールというホルモン(ストレスホルモンと呼ばれる)が分泌されるほか、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質が血中に増え、ストレスに対処しようとします。しかし、ストレス状態が慢性的に続くことによってさまざまな悪影響が現れるようになります。たとえば、身体面では頭痛・肩こり・腰痛・下痢、心理面では不安・イライラ・抑うつ・気力や集中力の低下、行動面では飲酒量の増加、拒食・過食、不眠、ギャンブルや薬物への依存などです。
さらに、うつ病や不眠症などの心の病気だけでなく、高血圧や糖尿病、胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群など、さまざまな病気と深いかかわりがあることも知られています。
ストレスによる心身の不調や病気を防ぐには、ストレスが蓄積する前に上手に解消することが重要です。そこで、最近注目されている方法の一つ、うつ病の精神療法で用いられる認知行動療法を、ストレス対策に応用した「コーピング」という対処法を紹介します。
コーピングとは、ストレスを軽減するために、物事のとらえ方(認知)や行動を変化させて環境に適応していく手法です。
コーピングは、ストレスの原因そのものに働きかける「問題焦点型コーピング」と、ストレスがもたらす不快な感情(情動的な苦痛)を軽くする「情動焦点型コーピング」の2つに分けられます。
ストレスの原因となる問題を書き出して明確にする、情報を集める、問題点に合わせた解決策を講じるなどの対処を行う。
<実践例>
情動的な苦痛を軽減するために、ストレスの原因を避けたり、気晴らししたりするなどの対処法。
<実践例>
ストレスの原因が、対処によって変化できそうな場合には問題焦点型のコーピングを行うことでストレスの原因を解決することができます。しかし実際は、それが難しいケースが少なくありません。その場合には情動焦点型のコーピングでストレスの軽減を図ります。