「朝、通勤電車に乗ったときに必ず便意をもよおす」「出社したとたんに腹痛が起こる」など、慢性的な下痢や便秘、腹痛に悩まされて生活に支障をきたす「過敏性腸症候群」。主にストレスが引き起こすというこの病気に、どのように対処していけばよいのでしょうか。
検査をしても大腸に異常がみつからないにもかかわらず、下痢や便秘、腹痛や腹部膨満感など下腹部に不快な症状があらわれるのが過敏性腸症候群です。20~40歳の比較的若い世代に多くみられるのが特徴です。
食べ物は腸の蠕動運動によって小腸から大腸へと移動します。この蠕動運動は脳や大腸から分泌されるセロトニンによってコントロールされていますが、ストレスによってセロトニン分泌のバランスが乱れると、大腸の動きが不安定になってしまいます。
大腸の蠕動運動が過剰になると大腸での便の水分吸収が不十分となって軟便や下痢を招き、逆に大腸の動きが悪くなると便が滞って便秘になってしまいます。また、脳でつくられるセロトニンの量が減少すると少しの刺激で痛みを感じやすくなり、腹痛が起こります。
細菌・ウイルスの感染や、腸内細菌も、過敏性腸症候群とかかわりがあります。細菌やウイルスによって「感染性腸炎」を発症すると、これが治った後に過敏性腸症候群を発症しやすくなるといわれています。また、腸内細菌のバランスが乱れて悪玉菌が増えることによって、発症する場合もあります。
過敏性腸症候群の診断には、自覚症状にもとづいて診断する下記の「RomeⅣ基準」(世界的な診断基準)が用いられています。
このほか医療機関では、大腸がんなどの病気ではないか確認するために、血液検査や便検査が行われます。大腸内視鏡検査などが行われることもあります。
過敏性腸症候群の治療では、まず生活習慣の改善やストレスの軽減を図ります。十分な睡眠をとり、規則正しい生活を送るように心がけ、リラックスする時間をもうけるようにします。
食物繊維を多く含む食品を積極的にとるようにし、乳酸菌を多く含む食品なども意識してとるようにしましょう。逆に香辛料を使用した刺激の強い料理、高脂肪の食べ物、アルコールは控えるようにしてください。
また、適度な運動は腸の働きを整え、原因となるストレスを軽減させることができます。
生活習慣を改善しても症状が軽減しない場合には、薬物療法を行います。その際、症状や体質に合わせた薬が選択されます。
過敏性腸症候群で用いられる主な薬
過去に過敏性腸症候群と診断され、治療を受けた人が再発した場合は、トリメブチンを主成分とするスイッチOTC医薬品(医療用から市販薬に転用された薬)が、ドラッグストアで購入できます。