マイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ)を原因菌とする肺炎です。報告される患者の約80%は14歳以下ですが、大人でも感染する可能性があります。1年を通じて発生し、特に秋から冬にかけて増加する傾向があります。症状は比較的軽い場合が多いものの、重症化することもあるため注意が必要です。
最初の症状として発熱、全身の倦怠感、頭痛などがみられます。初期症状が出てから3~5日後にせきが出るようになります。熱が下がっても、長期にわたって(3~4週間)せきがつづくのが特徴です。鼻炎は典型的な症状ではないものの、小児では比較的よくみられます。
まれに合併症を起こすことがあり、中耳炎、胸膜炎、心筋炎、髄膜炎、脳炎などが報告されています。特に免疫力が低下している場合や持病がある患者は重症化しやすく、一般的に子どもより大人のほうが重症化しやすい傾向があります。
マイコプラズマ肺炎は、飛沫感染や接触感染によって広がり、濃厚接触の機会の多い学校内や職場内で集団感染が起こることもあります。
潜伏期間は新型コロナウイルスが約2~7日であるのに対し、マイコプラズマは増殖が遅いため通常2~3週間と長めです。
マイコプラズマ肺炎は、かつては4年ごとに流行することが多かったため「オリンピック肺炎」とも呼ばれていました。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い感染対策が強化されたことで、2020年から2022年にかけてはマイコプラズマ肺炎を含む呼吸器感染症の報告数が世界的に減少しました。2023年以降、新型コロナウイルス感染症が感染症法上の5類※に移行し、感染対策が緩和されたことで、ふたたびマイコプラズマ肺炎が流行するようになったのです。
2024年第38週(9月16日~22日)には、東京都内の25カ所の基幹定点医療機関から報告された患者数が70人(1定点あたり2.80人)に達し、1999年以降で最多となりました。
※感染症は、感染の広がりやすさや症状の重症度などの危険度に基づいて5段階に分類されており、5類は危険度が最も低い。
マイコプラズマ肺炎の予防には、基本的な飛沫感染対策と接触感染対策が有効です。以下のポイントに留意して、感染リスクを少しでも減らしましょう。
治療には主にマクロライド系抗菌薬(例:エリスロマイシン、クラリスロマイシン)が用いられ、小児に対して特に有効とされています。しかし、近年ではこれらの抗菌薬が効かない菌が出てきており、場合によってはテトラサイクリン系やニューキノロン系の抗菌薬が使用されることがあります。
大人の場合、軽度の気管支炎などでは必ずしも抗菌薬が必要とは限りませんが、症状が長引いたり重症化したりする場合には、適切な抗菌薬治療が求められます。
マイコプラズマ肺炎に対する上述の抗菌薬は市販されていません。対症療法として、せきや熱などの症状をやわらげるために市販薬を使用したい場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。
新型コロナウイルス感染症が5類に移行したことで、感染症対策が甘くなっていませんか?
マイコプラズマ肺炎は軽症で済むこともありますが、感染すると数週間にわたりせきが止まらないなど、からだに大きな負担がかかってしまいます。
感染症が蔓延しやすいこれからの季節に備えて、今一度基本的な感染対策を徹底しましょう。
また、感染が疑われる場合は早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることも大切です。
参考サイト
厚生労働省 マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマ肺炎とは|国立感染症研究所
マイコプラズマ肺炎の発生状況について|国立感染症研究所
東京都 HP 都政情報