コロナ禍が長引いて、マスク生活を送るようになってからすでに2年以上がたちました。マスクはウイルス感染から身を守るための重要なアイテムですが、長時間マスクをしていることによって、新たな健康トラブルも起こっています。そのひとつが「マスク頭痛」です。今回は、マスク頭痛の原因と対策について解説します。
日本には、原因となる病気がないのにたびたび頭痛に悩まされる「慢性頭痛」の人が、4,000万人もいるといわれています。その代表は、「緊張型頭痛」と「片頭痛」です。コロナ禍で増えているマスク頭痛は、このいずれかと関わりがあるとも考えられています。
緊張型頭痛と片頭痛は、それぞれ次のような特徴があります。
慢性頭痛でもっとも多いタイプで、日本に2,000万人いるといわれます。肩や首、背中の筋肉に緊張や張りが起こり、それらによって血液循環も悪くなり、頭全体が締めつけられるように痛みます。悪い姿勢で作業をしたり、同じ姿勢、たとえば本やスマートフォンを見続けたりすることが原因となるほか、ストレスも大きな原因となります。
脳の血管を取り巻く三叉神経から神経伝達物質が放出され、血管が拡張したり、血管の周辺に炎症が起きたりしてズキンズキンという激しい痛みが起こります。片頭痛という名前ですが、両側が痛む人も少なくありません。日本におよそ800万人いるといわれています。原因は、ストレス、寝不足・寝すぎ、人込みや騒音、臭い、気温や湿度の変化、月経、空腹など、人によってさまざまです。痛みだすと光や音に敏感になり、痛みが増します。
マスクをつけているときは、呼吸で吐き出した二酸化炭素がマスクと口の間の空間にたまり、マスク内の二酸化炭素濃度が高くなります。吸い込むときも二酸化炭素を多く吸い込むので、血液中に二酸化炭素が増えて血液中の酸素濃度は低下します。そのため血液からできるだけ酸素を多く取り込もうとして脳の血管が拡張し、片頭痛のような痛みを起こすと考えられています。
マスクをつけているとき、耳にかけるためのひも(ゴム)で耳が痛みなどを感じ、それによって肩や首の筋肉が緊張して緊張型頭痛が起こることも考えられます。また、マスクをしていると表情変化が乏しくなり、表情筋がいわゆる“運動不足”の状態になり、緊張型頭痛の一因になっている可能性もあります。
そのほか、マスクを長時間装着することによってストレスを感じる人もいます。マスクに触れる皮膚や耳の違和感によるストレス、あるいはほかの人と意思疎通が図りにくくなることもストレスになります。これらのストレスが緊張型頭痛、片頭痛の原因になっていることも考えられます。
コロナ禍になって頭痛がするようになった、という人は、マスク頭痛の可能性があります。とくに、もともと緊張型頭痛や片頭痛などの頭痛持ちで、コロナ禍でさらに頭痛の頻度が増えた人はその可能性が高いので、痛みを減らす対策をとりましょう。
人が集まるところでは、感染予防のためにまだマスクが必須です。ただ、厚生労働省や環境省は熱中症を予防する意味からも、ほかの人と2メートル以上距離を保てるところではマスクを外すことを推奨しています。人の多い職場や学校などでは、1時間に1回くらい人の少ない場所に行き、休憩を兼ね、マスクを外してゆっくり深呼吸をするとよいでしょう。
顔と比べ、小さすぎるマスクは、耳に負担がかかり、頭痛の原因になります。顔に合ったサイズや、耳に負担がかからないよう工夫されたマスクを選びましょう。ひもの長さを調節できるマスクや、長さを調節できるアジャスターも市販されています。
マスクを外す、サイズの合ったマスクを選ぶ、といった対処法を行っても痛みが気になるときは、市販の頭痛薬を使うことも考えられます。その場合は、痛みが強くなってからではなく、痛みが起きたらすぐのんだほうが効果的です。ただし、市販の頭痛薬を1カ月に10回以上のむような場合は、「頭痛薬による頭痛」を起こす危険性があるので、市販薬に頼り切らず医師に相談しましょう。