全国1400の健康保険組合の代表者約3500人が参加して「平成29年度健康保険組合全国大会」が開催され、プログラム後半において「2025年度に向けた医療保険制度改革」をテーマにしたパネルディスカッションが行われました。医師や研究者、ジャーナリストなどのパネリストにより、団塊の世代すべての人たちが後期高齢者となり、国民医療費がピークに達する2025年を迎えるにあたって、医療保険制度が良好に運営されるためには何をするべきか、各立場からの意見が交わされました。
平成29年11月28日、東京国際フォーラム・ホールAにて開催
*写真左から
コーディネーター
梅村 聡 医療法人適塾会よどがわ内科クリニック理事長
パネリスト
堀 真奈美 東海大学教養学部人間環境学科教授(健康学部設置準備委員会委員長)
山口 聡 日本経済新聞社シニアエディター
棟重 卓三 健康保険組合連合会理事
誰もが少ない自己負担で自由に医療が受けられる日本の医療保険制度は世界で最も優れた医療制度ですが、少子高齢社会において医療費の支出が膨れ上がり、もはや病院は気軽に行ける場所ではなくなってきています。健康保険組合では、全支出の半分近くを高齢者医療費をまかなうための拠出金にあてており、高齢者医療費の急増により多くの健保組合の財政が逼迫しています。国民が今ひとつ危機感をもっていない現状に対して東海大学の堀氏は、医療保険制度は危機的状況であり、待ったなしの問題であることを国民に伝えていく必要性を強調しました。患者が医療機関に支払う自己負担について、「緊急な場合とそうでない場合で負担を分けることもあり得る」という考えのもと「何に優先的に費用を使うかを議論すべきである」と述べました。
日本経済新聞社の山口氏は「健保組合は健康保険制度のオーナーであるのに、制度をどうするか、どう変えていくかについて発言することを遠慮している。ぜひ主導権を発揮してほしい」と要請し「健保組合が保険者として医療提供体制を変えていくところにまで取り組んでもらえれば、報道側としてもその動きをより広く伝えていくことができる」と健保組合の積極的な活動を喚起しました。
司会を務めたよどがわ内科クリニックの梅村氏は、がん医療などの地域格差をなくし、リハビリのためのベッド数を増やすなど病床の再編成を行っていくことの必要性を示しました。加えて「今後の医療において総合診療医の数を増やしていくことが望まれるが、それを志望する学生もまた増えている」と、患者の身体および社会生活などを含めた全体を継続的に診ることができ、必要に応じて専門医への橋渡しをする総合診療医の育成が望まれると医療現場からの意見を述べました。
健康保険組合連合会の棟重氏は、健保組合が他の保険者(国民健康保険の保険者である市区町村や、中小企業などの保険者である協会けんぽ)よりも多く健康づくり事業に投資していることをふまえ、「優れた事例を紹介していく」「40歳未満からの健康づくりに取り組み、高齢になっても健康でいる人たちを国保や後期高齢者などの他制度に送り出す流れをつくる」ことなどを目指し、高齢者医療の支え手を増やす取り組みを行い、地域の医療提供体制にも意見を述べていく方針であることを説明しました。
今後も健保組合の果たしている役割を幅広く発信し、関係団体との連携のもと、高齢者医療の負担構造改革等の実現に引き続き取り組む必要があることを強調して会を終えました。
(制作部 M)