去る10月23日、東京国際フォーラムに全国の健保組合の代表者、約4,000人が集い、健康保険組合全国大会が開催されました。「国民皆保険制度を守っていくために、高齢者医療の負担構造改革で現役世代の負担に歯止めを」と強く訴え、「拠出金に50%の上限」「高齢者の医療費2割負担」などの4項目を全1,390の健保組合の総意として決議しました。自民党から小泉進次郎厚生労働部会長が登壇するなど、大きな盛り上がりを見せた本大会の中から、経済産業省 商務・サービスグループ政策統括調整官・江崎禎英氏の講演内容を2回に分けてお届けします。
一般に「高齢化」と聞けば何となく暗い印象を持つ人が少なくありません。しかし、誰もが健康で長生きしたいと願い、経済の発展と医療技術の発達によってそれが可能になれば、社会は必然的に高齢化するのです。ついこの間まで人生80年、90年時代と言われていましたが、今では人生100年時代と言われるようになりました。では、この先高齢化はどこまで進むのでしょうか。人類の生物学的な寿命は120年と言われています。「還暦」という言葉は暦が一周したという意味です。暦が二周する120年は「大還暦」というのです。もし、誰もが120歳まで生き、人口が安定した社会が実現すれば、その時の高齢化率は46%です。高齢化は健康長寿を願う人類の理想に近づいている証なのです。
今年は明治維新から150年。この150年の間どのような人口構成で社会が成り立っていたか、更には今後100年どのような人口構造になるのかを見てみましょう(図1参照)。1970年頃までは、「たくさん子供が生まれてたくさん死んで、生き残った人が社会を支え50歳過ぎでリタイアした後は数年で死ぬ」というのが社会の基本構造でした。60歳を「還暦」として祝うのも頷けます。しかし、今後は多くの人が100歳近くまで生きられるようになるのです。子育てが終わった後、自分と社会のためだけに全てのエネルギーが使える素晴らしい時間がやってくるのです。
実際、高齢者の健康状態をデータでみると、男性で85%、女性で80%が80歳近くまで健康な状態を維持しています(図2参照)。問題は、男女ともに3割近くの方が身体的には問題がないものの、何の役割もなく無気力に陥っていることなのです。この方々の多くが遠からず認知症になり、社会の根幹を揺るがすほどのインパクトを与えることになるのです。
つまり、「高齢化」は対策すべき課題ではなく、与えられた時間をいかに楽しく、健康に生きるかが重要であり、二周目の人生における「幸せの形」を見つけることこそが私たちが取り組むべきテーマなのです。
超高齢社会とは「健康長寿社会」であるべきです。会社をリタイアした後も社会的な役割と自由が確保される環境が整えば、私たちは最期まで自律した生活を送ることができるのです。医療や介護は、自律した生活をサポートするための仕組みなのです。歳を取ったら弱るものだと誰が決めたのでしょう。医療保険や介護保険制度に依存することが当たり前と思っている限り制度は早晩崩壊します。そうならないためにも、誰もが楽しく、健康に生きるための方法を考え、具体的な行動に移すことが求められるのです。
(PART2に続く)