先ごろ厚生労働省が5年ぶりに都道府県別平均寿命を発表しました。今回特筆すべきは滋賀県の躍進ぶり。男性では長年1位だった長野県を抜いてトップに躍り出ました。女性もまた前回の12位から4位とランクアップしました。
食事や運動、生活習慣、自治体の取組みなどがどのようにして住民の長寿と結びついているのでしょうか。その関連性についてみてみましょう。
全国NO.1の長寿県の座に長年にわたって君臨し続けてきたのが長野県。かつては脳卒中の死亡率が全国1位だった時期もありましたが、市町村が積極的に健康づくりに取り組んできた結果、住民の健康度が大幅にアップしました。
滋賀県では各市町村が健康増進計画や食育計画に取り組んできたほか、健康に関する大規模な調査を行い、分析結果を健康づくり事業などに生かしています。県は自転車で琵琶湖(周囲約200km)を一周する「ビワイチ」の普及に力を入れています。
古くからの生活習慣にも、滋賀県が長寿である理由を垣間見ることができます。食生活に目を向けると、まず浮上してくるのが地元の伝統料理である「鮒ずし」の存在です。これは琵琶湖でとれるニゴロブナを塩漬けした後、炊いたご飯を重ね漬けし、自然発酵させたものです。乳酸菌SU-6が豊富で、腸内環境を整え、免疫力を高める効果があります。骨ごと漬けるので骨まで食べられ、カルシウムがたくさんとれるだけでなく、ビタミンやミネラルが豊富で美肌効果も期待できます。
次にアユ、モロコなどの湖魚、カワエビなどに注目。頭からしっぽまで丸ごと食べるのでカルシウム、ミネラル、ビタミンなどがよくとれます。お寺の数が多いため、体によい大豆を多く使う精進料理が発展したことも長寿の要因になっていると考えられています。行政の努力に加え、昔からの風土・習慣によって、男性では脳血管疾患による死亡率が全国一低く、がんによる死亡率も低くなっています。
スポーツの年間行動者率(過去1年間でスポーツをした人の割合)が全国2位、過去1年でボランティア活動をした人の割合が全国8位、旅行や行楽に行った人の割合が全国1位などのデータ(総務省)から、好奇心が旺盛で積極的な行動力を有するという県民性も明らかになっています。
一方、前回に引き続き、男女ともに短命県全国1位となっているのが青森県です。それでもアルコール摂取量や喫煙率は減少傾向にあり、野菜の摂取量がアップしていることから健康づくりに対して努力していることがうかがえます。
青森県民にとって最大のネックとなるのが食塩の摂取量でしょう。ラーメン(インスタントラーメンの購入量全国1位)などの塩分の高いメニューを好み、焼き魚にしょう油を多量にかける傾向があるなど塩分摂取量が高い状態にあります。食塩摂取量は男性が全国2位で、女性が5位となっています。
県では塩分を控えて素材そのものの味をひきだす味つけを推奨する「だし活」キャンペーンを展開していますが、急激な変化を見込むことはできず、じっくり腰をすえて取り組んでいく構えのようです。
男性 | 女性 | |||
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都道府県 | 平均寿命 | 都道府県 | 平均寿命 | |
1位 | 滋賀(2位) | 81.78歳 | 長野(1位) | 87.67歳 |
2位 | 長野(1位) | 81.75歳 | 岡山(8位) | 87.67歳 |
3位 | 京都(6位) | 81.40歳 | 島根(2位) | 87.64歳 |
4位 | 奈良(7位) | 81.36歳 | 滋賀(12位) | 87.57歳 |
5位 | 神奈川(5位) | 81.32歳 | 福井(7位) | 87.54歳 |
男性 | 女性 | |||
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都道府県 | 平均寿命 | 都道府県 | 平均寿命 | |
1位 | 青森(1位) | 78.67歳 | 青森(1位) | 85.93歳 |
2位 | 秋田(2位) | 79.51歳 | 栃木(2位) | 86.24歳 |
3位 | 岩手(3位) | 79.86歳 | 茨城(4位) | 86.33歳 |
( )は前回の順位
(制作部 M)