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要介護状態や認知症の一歩手前
「フレイル」を脱して健康寿命を延ばそう

日本人の平均寿命は世界トップクラス。しかし、介護を必要とせずに暮らせる期間を示す「健康寿命」との差は、まだまだ大きいのが現状です。超高齢社会を迎えている日本では、国民の健康寿命をいかにして延ばすかが重要な課題となっています。その観点から、今、「フレイル」という考え方とその対策に関心が高まっています。
厚労省では2020年度から後期高齢者を対象に「フレイル」健診を実施することを決定しています。

「健康」と「要介護」の中間の状態。ただし早く対処すれば後戻りできる!

人は年をとると心身の機能が徐々に衰え、介護の必要な状態になり、死を迎えます。「フレイル」とは、「健康な状態」と「介護の必要な状態」の中間を意味する概念で、日本老年医学会が提唱しました。「虚弱」を表す英語の“frailty”(フレイルティ)を語源としています。

高齢になってきたとき、なんらかの病気にかかっていたり、日常生活が不活発だったり、栄養状態がよくなかったりすると、フレイルの状態に陥りやすくなります。フレイルになると、転倒や骨折をしやすい、認知症になりやすい、免疫機能が衰えてかぜをひいたときに肺炎を併発しやすくなるなど、要介護の状態になるリスクが高まります。
フレイルには、筋肉や関節、口腔機能などが衰える身体的要因、うつ状態、認知機能が低下するなどの精神・心理的要因、独居で孤立化する、閉じこもってしまうなどの社会的要因の3つがあり、これらが重なるとより進みやすいといわれています。

このように、フレイルは介護が必要になる前段階として要注意の状態といえます。その一方で、フレイルに早く気づいて適切な対策をとれば、要介護状態になるのを避けられるだけでなく、生活機能の維持、さらには向上も期待できる、というのも重要なポイントです。

フレイルの概念図
(東京大学高齢社会総合研究機構「フレイル予防ハンドブック」より)

運動では「ウオーキング+筋トレ」、栄養面では「たんぱく質」を

フレイルはまだ新しい概念なので、まだ統一された基準はありませんが、Freid氏らの作った5つの基準がよく用いられています。日本では国内の研究結果をもとに下記の基準が作られています。

フレイルの基準(日本版J-CHS基準)
体重減少 6カ月で2~3kg以上の体重減少
筋力低下 握力が男性26kg未満、女性18kg未満
疲労感 ここ2週間わけもなく疲れたような感じがする
歩行速度 通常の歩行速度が1.0m/秒未満
身体活動 下記のいずれも、「週に1回もしていない」と回答
①軽い運動・体操をしていますか?
②定期的な運動・スポーツをしていますか?
  • 3つ以上に該当する ⇒ フレイル
  • 1~2つ該当する ⇒ プレフレイル
  • 該当なし ⇒ 健常

フレイルが疑われる人はもちろん、プレフレイルの人も、早めに対策を始めることが大切です。重要なのは、身体的な衰えを防ぐために、運動を習慣づけ、栄養をしっかりとることです。

運動では、歩行機能を保つためにウオーキングを取り入れましょう。健康日本21(第2次)では、65歳以上の人の歩数の目標を、男性は1日7000歩以上、女性は6000歩以上としていますが、まずは5000歩をなるべく早足で歩くように心がけましょう。また、筋トレで筋肉を維持することも大切です。たとえば、腹筋運動やスクワットを、それぞれ10回行うことから始めてみましょう。

栄養面では、主食(ごはん、パンなど)、主菜(メインのたんぱく質のおかず)、副菜(野菜類など)のそろった、栄養バランスのよい食事を心がけましょう。そのうえで、筋肉をつくるのに不可欠なたんぱく質(肉、魚、大豆製品、卵など)を積極的にとりましょう。中高年になると肉類を敬遠する人が増え、たんぱく質が不足している人も少なくありません。男性は1日60g以上、女性50g以上(2015年版日本人の食事摂取基準での推奨量)をとるようにしましょう。また、骨を強くするためにカルシウムと、カルシウムを骨に沈着させるビタミンD、そのほかミネラル、ビタミン類もきちんととりたい栄養素です。

加えて、趣味をもったりボランティアに参加したり、積極的に社会参加することも有効です。ほかの人と接することで一緒に体を動かすきっかけになり、楽しく食事する機会がふえ、孤立化を防ぎ、うつ病予防にもなるなど、さまざまな点でフレイル予防になります。

フレイル予防に必要な3つのこと

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