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  • 「ピロリ菌対策」と「検診」が両輪 胃がんの予防・早期発見の最前線

「ピロリ菌対策」と「検診」が両輪
胃がんの予防・早期発見の最前線

2018年のデータによると、「胃がん」は日本で2番目に罹患者数(新たにがんにかかった人の数)の多いがんです。胃がんの主な原因はピロリ菌の感染であることがわかっており、感染しているかどうかを調べる検査や、感染している場合の除菌治療が広く行われています。ピロリ菌と胃がんの関係や、早期発見のために受けたい胃がん検診について解説します。

胃がんの最大の原因はピロリ菌

ピロリ菌の正式な名称は「ヘリコバクター・ピロリ」といいます。詳しい感染経路は不明ですが、飲み水などの生活用水や食品を介しての感染が多いと考えられています。ピロリ菌は乳幼児期に感染するケースがほとんどで、成人での感染は少ないといわれています。現在の感染者の多くは、まだ上下水道などの衛生環境が整備されていなかった1950年代前後に生まれた人たちで、衛生環境の整備が進むにしたがって感染者は減少しています。現在、新たに感染するリスクはあまりありませんが、ピロリ菌に感染している人が乳幼児に口移しや同じスプーンで食べ物を与えると、感染させてしまう可能性があります。

ピロリ菌に感染すると、ほとんどの人が数週間~数カ月後にピロリ菌感染胃炎を起こすといわれています。しかし、症状が現れにくく、感染したことに気づかない人が大半です。炎症が長い期間続くと、一部の人は胃潰瘍や十二指腸潰瘍を発症します。また、多くの人が萎縮性胃炎に移行します。萎縮性胃炎とは、炎症が長く続いたことによって胃の粘膜が薄くなった(委縮した)状態で、がんが発生しやすくなります。今や胃がんの98%はピロリ菌が原因といわれています。

ピロリ菌の検査を受けるには

胃の内視鏡検査や胃部X線検査で胃潰瘍や十二指腸潰瘍と診断された人、内視鏡検査で胃炎と診断された人は、健康保険でピロリ菌の検査が受けられます(※)。
また、費用は自費となりますが、健康診断や人間ドックのオプションとしてピロリ菌の検査を受けられる健診機関も多くあります。

このほか、自治体の中には住民を対象にした検診などで、ピロリ菌の検査を行っているところがあります。最近では、将来の胃がんのリスクを減らすために中学生を対象にピロリ菌検査を行うところもふえています。

※胃MALTリンパ腫(胃粘膜のリンパ組織から発生する腫瘍)や、血小板減少性紫斑病(血液の血小板が減少し、出血しやすくなる病気)などの人も、ピロリ菌の検査を健康保険で受けられる。

検査方法には内視鏡を使う方法と、使わない方法がある

ピロリ菌の検査は、内視鏡を使う方法と使わない方法の大きく2つに分けられます。

●内視鏡を使う方法(内視鏡で胃の組織を採取して調べる)

➀迅速ウレアーゼ試験
 ピロリ菌の出すウレアーゼという酵素の活性を利用し、ピロリ菌がいるかどうかを判定する。

②鏡検法
 採取した組織を染色して顕微鏡で観察し、ピロリ菌がいるかどうかを確認する。

➂培養法
 採取した組織を用いて培養し、ピロリ菌が増えるかどうかを調べる

●内視鏡を使わない方法

➀抗体測定
 血液や尿を採取してピロリ菌に対する抗体を測定し、ピロリ菌に感染しているかどうかを判定する

②尿素呼気試験
 検査用の薬をのみ、一定時間経過したあとに吐き出した息(呼気)を測定し、ピロリ菌に感染しているかどうかを調べる

➂便中抗原測定
 便を採取して試薬と反応させ、ピロリ菌の抗原があるかどうかを調べる

除菌治療で胃がんのリスクを減らす

胃潰瘍、十二指腸潰瘍、慢性胃炎と診断され、ピロリ菌の検査で陽性(ピロリ菌がいる)とわかった場合は、除菌治療がすすめられます。この場合、除菌治療は健康保険で受けられます。

胃がんの発生には塩分やアルコール、発がん性物質、ストレスなどもかかわっていますが、除菌することによって胃がんの発生リスクを確実に減らすことができます。また、胃潰瘍や十二指腸潰瘍でたびたび再発していた人は、再発を防ぐことができます。

除菌治療はアモキシシリン、クラリスロマイシンという2種類の抗菌薬と、胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬を1日2回、7日間服用します。除菌治療が終了してから4週間以上あけて尿素呼気試験などを行い、ピロリ菌が除菌されたかどうかを判定します。この治療による除菌の成功率は70~90%です。もし除菌できていなければ、抗菌薬のクラリスロマイシンをメトロニダゾールに変更して2回目の除菌治療を行います。

胃がんを早期に見つけるために、欠かさず胃がん検診を受ける

胃がんから命を守るためには、胃がん検診を定期的に受け、早期発見に努めることも大切です。これはピロリ菌の除菌治療を受けた人も同様です。除菌治療を受けることによって胃がんの発症リスクは低下しますが、すでに胃粘膜の萎縮が進んでいる場合は、除菌してもがんを発症する可能性があるからです。

国では、自治体による胃がん検診について、「50歳以上を対象に、胃部X線検査あるいは胃内視鏡検査を2年に1回実施する」という指針を設けています(当分の間、胃部X線検査は40歳以上を対象に、1年に1回実施可)。

●胃部X線検査
 バリウムをのんでX線で胃を撮影する。異常が見つかった場合は、内視鏡検査で胃の粘膜を調べる

●胃内視鏡検査
 口あるいは鼻から内視鏡を入れて、胃の粘膜を直接観察する。胃部X腺検査では見つけにくい小さながんの早期発見が可能。ピロリ菌に感染しているかどうかも推測できる

もし胃がんとなっても、検診で早期に発見できれば、完治が期待できるのはもちろん、体に負担の少ない方法で治療できます。欠かさず胃がん検診を受けたいものです。

 

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