夕方になると足首やふくらはぎがむくんだり、朝、鏡を見るとまぶたや顔がむくんで腫れぼったかったり……そんな経験がある人は多いかもしれません。このような一時的なむくみはたいてい心配ありませんが、むくみのなかには病気が隠れていて治療が必要なものもあります。今回はむくみの原因や、セルフケアなどの対処法を紹介します。
わたしたちの体では、抹消の毛細血管(動脈)から水分がしみ出て、各組織の細胞に栄養と酸素が供給されています。残った水分は静脈から回収されて再び心臓に戻るほか、一部はリンパ管に入り、静脈に戻されます。何らかの原因で血管やリンパ管からの回収がうまくいかずに水分がたまると、むくみとして現れます。
とくに下半身の水分は重力に逆らって心臓のほうに押し上げる必要があるので、下半身はむくみやすいといえます。
病気とは関係のない、日常的に起こるむくみの原因には、「1日中デスクワークで同じ姿勢を続ける」「窮屈な靴やヒールの高い靴をはく」「普段から運動不足」「塩分の多い食事やアルコールの多量摂取」などがあげられます。
足がむくむ、という人は少なくありませんが、同じ姿勢を長く続けることが大きな原因なので、ときどき姿勢を変えたり、軽いストレッチをして筋肉の緊張をほぐしたりすると、血液などの循環が促され、むくみの予防になります。むくみの症状がみられたら、温かいお風呂にゆっくりとつかるとむくみの解消に役立ちます。
朝起きたときに顔がむくんでいることが多くて困る、という人もいます。これは就寝中に足と心臓と頭が同じ高さになり、重力の影響がなくなって、足のほうに滞っていた水分が頭のほうにやってくるためと考えられます。お酒を飲んだ翌日や、塩分のとり過ぎで顔がむくみやすくなる人が多いので、まずはこれらに気をつけてみましょう。多くの場合、午後になると解消されますが、すぐに解消したい場合は顔のマッサージを行うのもよいでしょう。
日常生活では以下に注意すると、部位にかかわらずむくみの予防に役立ちます。
●適度な運動をする
下半身の筋肉がつくと血液やリンパ液の循環が促進されるので、むくみにくくなります。スクワットなどの下半身の筋トレを習慣づけましょう。また、ウォーキングやランニングなどの有酸素運動も、全身の血液やリンパ系の循環がよくなるのでむくみ予防になります。
●塩分を控える
塩分の摂取量が多いとむくみの原因になります。体内の塩分は常に一定の濃度に保たれており、塩分を過剰摂取すると塩分濃度を薄めるために体内に水分をため込み、むくみにつながるからです。めん類のスープは残す、みそ汁は具だけ食べる、などを心がけましょう。カリウムを多く摂取すると塩分(ナトリウム)の排出が促されるので、カリウムを多く含む食品、たとえば、ほうれん草、にんじん、モロヘイヤ、小松菜などの野菜や、バナナ、メロン、キウイフルーツなどの果物をとるのもよいでしょう。
●アルコールを控える
アルコールを飲むと血液中のアルコール濃度が上がり、それを薄めようとして水分を多く飲むためにむくみやすくなります。アルコールを飲む際は量を控えめにし、少しずつ飲むようにしましょう。
よく足がむくむという人は、試してみましょう。
➀バケツに入れたお湯に足をつけ、足の指を動かす
➁お風呂あがりに足の裏をもみ、足首をよく回す
③寝るときに足の位置をやや高くする
通常のストッキングより圧迫圧の高いストッキングをはく、という方法もあります。これらのストッキングは着圧ソックス、圧迫ストッキング、弾性ストッキングなどと呼ばれています。病気とは関係のない一時的なむくみであれば、ドラッグストアなどで入手できるものを使用してもよいでしょう。
なお、慢性的なむくみは病気が原因となっている場合があり、下肢静脈瘤やリンパ浮腫などでは医療用の弾性ストッキングを用いた圧迫療法が行われることがありますが、病気の種類によってはかえって病状を悪化させる可能性もあります。医師による病気の診断と、圧迫療法が行えるか、どんなストッキングを選べばよいかを医師に判断してもらう必要があります。
慢性的なむくみは、心臓や腎臓などの病気が原因となっている場合があります。もし、むくみがとれない、ひどくなってきた、というときは医療機関を受診しましょう。すでに下記の病気で治療中の場合でも、医師がむくみに気づかないこともありえますから、その場合はすみやかに医師に伝えましょう。むくみとともに、息苦しさや熱感、痛みを伴うようなときはすぐに受診する必要があります。
●腎機能障害(腎臓病、腎不全)
腎臓は血液をろ過して老廃物を尿として体外に排出する働きを担っています。腎機能が低下すると、体外に水分を排出できなくなるため、むくみが起こります。
●心不全
心臓が血液をうまく全身にめぐらせることができなくなる病気です。体内の血流が滞るため、むくみが起こります。
●下肢静脈瘤
女性に多い病気で、ふくらはぎなど下肢の静脈の弁が壊れ、血流が滞って膨らみ、足の血管が目立つようになります。だるさを感じたり、ひどくなると潰瘍ができる場合もあります。
●リンパ浮腫
生まれつきリンパ管の機能が弱いために起こる一次性リンパ浮腫と、がんやがんの治療、感染症などによって起こる二次性リンパ浮腫があります。二次性の例では、乳がん手術や子宮がんなどの手術でリンパ節を切除することによって、腕(乳がんの場合)、下肢(子宮がん、卵巣がんなどの場合)のリンパの流れが滞って起こるむくみがあげられます。
*上記のほか、肝硬変や甲状腺機能低下症、栄養失調、薬の副作用(高血圧の薬、糖尿病の薬、ステロイド内服薬などさまざま)によってむくみが起こる場合もあります。