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死亡率1位。早期発見が命を守るカギ「肺がん」

肺がんは日本人がかかるがんのなかでもっとも死亡者数が多く、年間約7万5,000人が肺がんで亡くなっています(厚生労働省「2021年人口動態統計(確定数)の概況」より)。死亡率も1位(男性1位、女性2位)となっています。肺がんは症状が現れにくいことに加え、ほかのがんと比べて進行が速く、転移しやすいため、定期的にがん検診を受けて早期発見することが大切です。

早期発見のために定期的にがん検診を受ける

肺がんの症状としては、せきや痰、血痰、発熱、息苦しさ、動悸、胸痛などがあげられます。しかし、初期のうちは無症状のことが多く、気づかないうちに進行してしまうケースが少なくありません。このため、早期発見するには定期的にがん検診を受けることが重要です。早期発見できれば完治する可能性が高くなり、体に負担の少ない治療が選べるケースも増えてきます。国が、推奨している肺がん検診は、胸部X線検査と喀痰細胞診の2つです。そのほか人間ドックなどでは肺がん発見のために胸部CT検査も行われています。

◎胸部X線検査
胸部にX線を照射して、がんが疑われるような陰影がないかを調べます。国の指針では40歳以上を対象に、年に1回受けることをすすめています。濃淡の比較的はっきりした1~2cm以上のがんは見つけることができますが、小さいがんや、淡いがんは発見できない場合があります。

◎喀痰細胞診
タバコを原因とする肺がんは、肺の中心部の太い気管支にできやすい傾向があります。そこで、痰を採取し、その中に気管支からはがれたがん細胞が含まれていないかを調べる検査です。国の指針では、50歳以上で禁煙指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が600以上の人を対象に、痰を3日間採取して調べます。

◎胸部CT検査
X線を照射して胸部の断層写真を撮影します。人間ドックなどで、肺がんドックとして行われているほか、胸部X線検査で異常が見つかった場合に、精密検査としても行われます。通常のX線検査では見つけにくい小さいがんや陰影の淡いがん、通常のX線検査では心臓に隠れてしまう太い気管支にできたがんも発見できます。

肺がんの代表的な原因としては、喫煙があげられます。また、肺がんは男性に多いことが知られています。しかし、タバコを吸わない人や、女性にも肺がんになる人が少なからずいますから、吸わない人や女性もがん検診を受けることが必要です。

肺がん予防にはまず禁煙。禁煙治療も検討を

肺がんのいちばんの予防法は禁煙をすることです。男性の喫煙者が肺がんを発症するリスクは、喫煙しない人の約4.5倍とのデータがあり、タバコを吸わなければ、男性の肺がん患者の約68%は肺がんを発症せずにすむといわれています。また、周囲の喫煙者からの受動喫煙によっても肺がんのリスクは上昇します。タバコを吸わない女性の肺がん(肺腺がん)の37%は夫からの受動喫煙が原因との報告があります。

喫煙は本人だけでなく周囲の家族の肺がんリスクも上昇させますが、禁煙すれば確実にリスクは下がります。しかし、禁煙に挑戦しても、どうしても失敗してしまう人がいます。これは意志が弱いからではなく、タバコに含まれるニコチンに依存性があるためです。どうしてもやめられない人は、医療機関で禁煙治療を受けることがすすめられます。医療機関のスクリーニングテストで「ニコチン依存症」と診断されるなど、いくつかの条件を満たすと健康保険で禁煙治療が受けられます(加熱式タバコも対象)。12週間(約3カ月)に5回受診し、医師や看護師による禁煙指導を受けて禁煙を目指します。禁煙治療では、タバコを吸いたい気持ちを抑えるために禁煙補助薬が用いられます。

国内の疫学調査で、喫煙する人は飲酒量が増えるほと肺がんのリスクが上昇するとの結果が報告されています。タバコを吸う人は禁煙するとともに、飲酒量や飲酒回数を減らすことも大切です。

治療法は主に3つ。いずれも進歩している

肺がんの治療法には、手術、放射線療法、薬物療法の3つがあり、1人ひとりのがんのタイプと進行度などによって治療法が決められます。いずれの治療法も進歩しており、薬物治療では、従来の薬とはまったく異なる作用をもつ、効果の高い薬が登場しています。

■手術
肺がんが小さく、転移がないか、転移があっても限られた範囲であれば、がんを手術で取るのがもっとも確実な治療です。肺は、右は3つ、左は2つに分かれていて、それぞれを肺葉といいます。現在はがんを肺葉ごと切除する「肺葉切除術」が多く行われています。
切除する方法にも2種類あります。1つはメスで胸を切開してがんを切除する開胸手術、もう1つは胸や胸の横(脇)に数cmの孔を3、4つ開け、そこから内視鏡と手術器具を入れてモニターを見ながら手術をする胸腔鏡手術です。ロボットアームに手術器具をつけ、医師が離れた位置でモニターを見ながら手術するロボット支援下手術も行われています。

■放射線治療
X腺などの放射線をがんに当て、がん細胞を死滅させる治療法です。最近は多方向から、ほかの臓器を避けながらがんに集中して放射線を当てる三次元原体照射が行われています。痛みが少なく、体に負担の少ない治療法といえます。早期の肺がんでは手術のように根治を目的に行われることもあります。また、抗がん薬治療と放射線治療を組み合わせた化学放射線療法が行われることもあります。
放射線治療の一種で、X線より粒子がはるかに重い重粒子線や陽子線を用いた「重粒子線治療」「陽子線治療」も一部の施設で行われています。どちらも体内の深部で大きなエネルギーを放出する特徴があるため、正常な組織にほとんどダメージを与えずに、がんだけを効果的にたたくことができます。肺がんでは先進医療として認められており、この治療部分は自費になりますが、そのほかの検査や入院などの費用には健康保険が適用されます。

■薬物治療
 薬物治療は、手術や放射線治療のあとの再発予防や、がんの進行を抑える、あるいはがんを縮小させることを目的に行われます。昔に比べ、薬のバリエーションやその効果、副作用を抑える方法など、さまざまな面で進歩しています。現在、肺がんに用いられる薬としては、主に次の3つがあげられます。

●抗がん薬
細胞障害性抗がん薬ともいいます。一般にがん細胞は増殖が速いのが特徴で、抗がん薬は増殖を抑えることを目的に使われます。このタイプの薬を用いた治療を化学療法ということがあります。

●分子標的薬
がん細胞は、特定の遺伝子の変異が原因となって異常な速度で増殖している場合があります。この遺伝子の邪魔をしてがん細胞の増殖を抑える薬です。増殖にかかわっている遺伝子は複数あり、肺がんでは5つの遺伝子変異に対する分子標的薬(いずれも内服薬)が開発されています。治療の可能な遺伝子の変異がないかを調べるため、遺伝子検査が行われます。分子標的薬による治療が行われた患者のうち6~9割でがんが小さくなるという効果が得られています。

●免疫チェックポイント阻害薬
本来、がん細胞を攻撃する役割を担っている免疫細胞を活性化させて、がん細胞を排除することを目的とした薬で、点滴で投与します。がんを小さくできるケースは分子標的薬ほど多くありませんが、効果が得られた人では、治療が終了したあとも効果が継続することがあります。

 

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