新型コロナウイルスの感染拡大によって自宅で過ごす時間が長くなり、自分で料理をする人たちが増えています。「健康な食事」への関心も高まり、食材に含まれる栄養素とその効果が注目されています。とくに、ビタミンやミネラルが豊富で、ダイエットや病気予防のためにしっかりとりたいのが “野菜” です。しかし、調理の過程や保存の仕方によって、ビタミンやミネラルなどが失われている場合も―。野菜の栄養をムダなくとるために、上手な選び方や処理法を知っておきましょう。
栽培技術や輸送法の進歩で、今では多くの野菜が1年中手に入るようになりましたが、同じ野菜でも本来の旬にとれたもののほうが、栄養価が高くて味がよく、価格も安いなど、メリットが多いことをご存じですか?
たとえば、「夏が旬」のトマトの場合。夏のトマトのβ-カロテンは冬のトマトの2倍以上あり、ビタミンCにしても冬の2倍以上との報告があります(『野菜のビタミンとミネラル』編著辻村卓・女子栄養大学出版部刊)。また、冬が旬のほうれん草を見ると、冬栽りのほうれん草のビタミンCは、夏栽りの3倍多いと報告されています(『日本食品標準成分表2015年版(七訂)』文部科学省)。
β-カロテンは体内でビタミンAとして働く栄養素で、感染症の予防や目・皮膚の健康維持には欠かせません。ビタミンCは細胞と細胞をつなぐコラーゲンの生成に不可欠な栄養素です。どちらも強い抗酸化作用をもち、老化防止などの効果も期待できます。
いずれも季節を問わずよく食べられているおなじみの野菜ですが、本来の旬の時期に、より積極的に食べることをおすすめします。
ほとんどの野菜は収穫から日がたつと栄養素が減少するので、新鮮なものを選ぶようにしましょう。見分ける大まかなポイントは、ヘタの状態、切り口、色、トゲの状態、重さなどです。
白菜、キャベツなどの葉菜
トマト、きゅうり、なすなどの果菜
大根やごぼう、ニンジンなどの根菜
野菜は調理法だけでなく、野菜の切り方や処理法によっても栄養素の量が変わるといわれています。当たり前にやっていることが、実は栄養素を失うことにつながっている場合もあるので注意しましょう。
ビタミンCやカリウムなどの水溶性の栄養素は、野菜を洗ったり、水にさらしたとき、水に溶けて流出しやすくなります。
洗うときは皮ごと手早く洗い、水になるべくさらさないようにすることが重要です。辛味やアクをとるためにどうしても水にさらしたいときは、サッと短時間で行うことがポイントです。
野菜を切るときは、繊維に沿って切ると苦み成分が出ないので縦切りするのが基本です。ピーマンなどの野菜の繊維は縦方向に並んでいることが多いため、縦に切れば、繊維を断ち切らずにすみ、細胞を壊すことが少なくなり、食べやすくなります。
野菜の種類によっては、刻むなど細胞を壊すことで栄養素が活性化するものがあります。
皮に”実”以上の栄養素が多く含まれている野菜も少なくありません。トマトなどの果菜は皮を食べる人も多いのですが、根菜の皮は口当たりが悪いために、皮をむいて食べる人が多いようです。皮に近いほうがβ-カロチンや食物繊維などが多く、加熱することで食感が気にならなくなるので、皮も一緒に食べましょう。日本の安全基準は「皮ごと」で定められているので、農薬の心配をする必要はありません。
また、捨てられることの多い大根やかぶの葉にも栄養素が多く含まれています。葉には大根やかぶそのものには含まれていない栄養素があるので、捨てずに活用しましょう。かぶや大根の葉は甘辛く炒めたり、煮たり、汁物の具にするとおいしく食べられます。
PartIIでは加熱調理の方法、保存法について解説します